千のポスクロで異国巡り

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国立近代美術館、高畑勲展に行ってきた。詳しく。偉大さを知る



国立近代美術館で7月2日から10月6日までやっている高畑勲展に行ってきました。

www.momat.go.jp

takahata-ten.jp


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アクセスはメトロ竹橋駅すぐ、都営地下鉄九段下駅から15分徒歩。皇居のすぐ近くですね。


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こんな建物です。
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高畑勲監督といえば火垂るの墓平成狸合戦ぽんぽこかぐや姫などジブリ映画監督のイメージが強いですが、ハイジや母をたずねて三千里など世界名作劇場の監督をしていた時期もあります。

展示物を章ごと振り返っていきたいと思います。


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第一章出発点アニメーション映画への情熱


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展示室に入ってきて一番最初に目に入ってくるのは年表です。高畑勲監督がどんなアニメ制作に関わってきたか一度に見ることが出来ます。監督作品他に風の谷のラピュタではプロデューサーとして関わってきたり、ルパン三世1stシリーズの演出をしたり、高畑勲監督の企画書でドラえもんのアニメ化が決まったりと。自分の監督作品だけでなくまたジブリ世界名作劇場に限らず日本のアニメに大きな影響を与えた人だと知ることができます。

東映動画(現東映アニメーション)に就職し、演出で関わった「安寿と厨子王丸」では女優にポーズをとってもらい絵に落とし込んだり。またオオカミ少年ケンでは1話完結であるからこそ滑稽な話から深刻な話まで演出方法の学びがあったといいます。オオカミ少年ケンの展示されている動画はポップな音楽で楽しいイメージです。

1968年「太陽の王子ホルスの大冒険」が初監督作品。アニメのストーリの遅れで放送局とトラブルもありつつ、三年半放送します。ホルスは初めて知って、ホルスの資料がたくさん展示されてました。他のアニメスタッフのストーリー理解を深めるため、コマごとに緊張開閉動など心情の様子を色を付けて分かりやすくしたり、人物の相関図を書いたり、高畑勲監督が自分の考えていることを他スタッフに共有できるよう、工夫を重ねていたことを知りました。また人間と悪魔の心を持つヒルダという魅力的なキャラクターも出てきます。



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ja.wikipedia.org

高畑勲監督が翻訳、現代美術で独特な表情の子供を描く奈良美智さんがイラストを描いた「鳥への挨拶」という詩画集も展示もされてます。

第二章日常生活のよろこび アニメーションの新たな表現領域を開拓

アルプスの少女ハイジ

高畑勲監督は東映動画を離れ世界名作劇場の監督を務めることになります。


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“子供の心を開放し生き生きとするアニメを作りたい”という想いが出てきたそうです。名作劇場第1作目のハイジは演出高畑勲さんレイアウト宮崎駿さん。レイアウトシステムというのを考え出し、宮崎駿さんが実行しました。必要な背景とキャラクターを描きどう動かすか決まってから原画を描くシステムで、出来上がりを想像して作るため無駄な絵コンテが出ない方法を取りました。レイアウトシステムについては漫画を使ってわかりやすく説明されている他、高畑勲監督の動画が展示されています。また、1年間毎週1話と区切られている中で話がスムーズに進んでいくよう事前設計をして作ったそうです。ハイジで描いたのは生き生きとする子供他衣食住や豊かな自然だといいます。春夏秋冬のアルプスの様子を描いた背景そしてキャラクターを重ねたものが展示されてます。一枚絵と違って背景も絵も違う人が作っているのに自然ですよね。生き生きとした様子はオープニングのブランコや雲に乗る姿や1話終わりの洋服を全部脱いでピーターのもとに駆け寄るところに顕著に見えます。ハイジはスイスでロケハンして現地の人に会い景色を見て作られたといいます。ジオラマも展示されてました。


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ジオラマ中に電車が通っている本格的なものです。ジオラマをつくることでハイジのいるアルプスの背景に矛盾が起きないようにする事のほかにアニメスタッフのハイジの世界のイメージを共有させやすくするための意味合いもあったのかなと思います。こだわりがすごいですね。よくできているのでゆっくり見てください。ここは撮影可能です。また、日常をリアルに描くためヤギの成長やチーズの作り方のメモも残されています。

の展示もこちらにあります。母をたずねて三千里がイタリアジェノバからアルゼンチンまで行くのだとは知りませんでした。三千里ってかなり長く旅しているイメージはあったんですが、そんな国を渡る話だったんですね。赤毛のアンは原作のニキビ顔の女の子で将来美人になる設定にこだわる高畑さんにアニメーターは顔の造りに苦労されたのだとか。原作の会話の面白さを活かしたアニメにしたとか


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 第三章日本文化への眼差し過去と現在の対話

アルプスの少女ハイジ母をたずねて三千里赤毛のアンこれまで海外の文学作品をアニメ化してきた高橋勲さんは日本を舞台にした作品を描き始めます。

大阪西成で自らホルモン屋を切り盛りする少女の話です。

宮沢賢治原作。アニメーターがチェロを練習し演奏シーンにリアルを求めたそう。

ジブリ映画。14歳の清田と4歳の節子。未来に起こるかもしれない戦争に対する想像力を子供に身に付けさせるため戦争を題材にしたアニメを作ったそう。鬼気迫る戦時中のありさまを背景美術家の山本二三がリアルに描いています。清田と節子と蛍の特大パネルが展示されているのですが、その光景は儚くも美しいです。

27歳の頃と小5のタエ子原作はそれぞれ章が分けられていたのですが、脚本で大きく変え飛び飛び小5の、自分を思い出す話構成に。当時は昔の振り返りといえばセピア調で表現することが定説だったそうですが、27歳の頃の背景は鮮明に小5の頃は記憶が遠い表現として背景を白くもやがかかるようにし差別化したそうです。

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開発が進む多摩市に対し狸が人間に対抗する話。自然がどんどんなくなっていく中で高
畑勲さんはこれを記憶映画という。一生懸命しているのに人間に反撃できない滑稽さやかわいささえ感じる狸たち。監督原作作品でCGを初めて使った作品でもあるそう。

第四章スケッチの躍動新たなアニメーションへの挑戦

これまでリアルで実在するアニメを徹底してきた高畑勲監督ですがリアリティを求めすぎると見る側の想像力を掻き立てないと考え始めます。

 


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 見かけ上のリアリティを排除する形ででてきたのがとなりの山田くん。デジタル彩色でありながら通常の三倍まで作画されている。見かけ上のリアル排除により見る側と距離を近く想像させ共感させる作品になっている。

かぐや姫の物語

 高畑勲監督最後の作品。日本人なら誰でも知る竹取物語を題材にした作品を作りたいというのは半世紀以上前アニメ作り始めた頃から思っていたことだそうです。女性として幸せになってほしいという親の気持ちと自分が生きたいようにいたい気持ちとその葛藤が今の私にも伝わってきます。大好きな作品です。かぐや姫が走るシーンは勢いのあるペンで描き、アニメとして動かすことでかぐや姫の苦しみや逃げ出したい感情あらわにしている様子がダイレクトに伝わってきます。ここではかぐや姫の作画について監督のインタビュー動画が展示されてます。1フロア使ってかぐや姫の展示は見ごたえがあります。走るシーンや捨丸と空を飛ぶシーンの原画と実際のアニメとみることが出来ます。一番知りたかった作品で展示も大きくされていて満足しました。

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グッズ

グッズは作品ごとかなりありました。ホルスや世界名作劇場かぐや姫ジブリのものと大充実です。

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私はポストカードを4枚買いました。

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感想

今回の展覧会に行ってみて高畑勲監督はジブリ世界名作劇場だけでなく多くの作品に関わりアニメに深く影響していること。海外へのロケハンなどリアルを求めまたジオラマや相関図づくりなどスタッフとどのような作品にしたいか見える形で共有していったこと、無駄な絵を作らないためにレイアウトシステムを編み出し用意周到にストーリーの進みを計算して原画づくりに取り組んだこと。晩年は見かけ上のリアルを排除することでより共感やより伝わることを重視するなど、ずっと新しい手法を追求していった人なのだと思いました。にしても大ボリュームの展覧会でじっくりでなくても2時間は廻るのにかかるほど、アニメインタビュー動画原画の数々でよく知ることができた展覧会でした。子供の頃世界名作劇場が大好きでジブリ作品も好きな私にとってはこれ以上ないいい展覧会でした。ぜひ行ってみてください

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